Beyond The Mountain

登りたいのは山々

有馬四十八滝(百間滝・七曲り滝)氷瀑巡り

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写真は有馬四十八滝の中の1つ、「七曲り滝」の氷瀑

今年も2月恒例、有馬四十八滝にある「百間滝」と「七曲り滝」の氷瀑を見に行ってきました。
聞きなれない「氷瀑(ひょうばく)」って何?と思う人もいるかも知れませんが、氷瀑とは滝が凍りつき巨大な氷柱郡と化したもののことです。

真冬の夜の気温が氷点下に下るような山間部では割とよく見られる光景ですが、六甲山地は街からのアクセスが良いこともあって、2月半ば頃、真冬の風物詩となって大勢の人が足を運びます。

六甲山地のどの辺りで「氷瀑」が見られるかと言うと、有馬温泉側から六甲ガーデンテラス方面への登山ルートである「紅葉谷道」の中腹、紅葉谷・白石谷周辺の滝郡で見られます。

僕は東灘区に住んでいることもあり、この季節になると毎年自宅を出発→住吉川沿いに北上→石切道経由→六甲ガーデンテラス→極楽茶屋跡→紅葉谷道で有馬へ下りるルートを取っています。

今回通ったルートは以下参照。

紅葉谷は植生が他の六甲山地とは違うようで、以下の看板が立てられています。

紅葉谷の森林

このあたりの気候は青森付近など東北地方に似ているといわれ、六甲山地の他の地域とは異なり、豊かな森の象徴とされるブナやイヌブナの混じった落葉広葉樹林になっています。六甲山地ではイヌブナは600m付近、ブナは800m付近より高い標高の地域にみられます。
しかし、これらの樹木は分布が限られ、六甲山地全体でもこの紅葉谷を中心にブナは100本余りしか生育していません。また後継樹の芽生えは極めて稀で、幼木はほとんど見当たりません。
この紅葉谷の森林は、深い渓谷にブナ、イヌブナのほかシラキ、クリ、コナラ、カエデやシデの仲間など新緑や紅葉の美しい樹木が多く見られる六甲山髄一の豊かな自然林です。 

神戸市森林整備事務所

青森って!
どうりで他の六甲山地より寒く感じる訳です。そりゃ滝も凍るわ。

真冬の紅葉谷道は上記説明文の通り他の六甲山地より寒いですし、北側斜面なので南側斜面(芦屋川~六甲最高峰等の六甲山メジャールート)と比較すると雪も多いし登山道が凍結している箇所も多いです。くれぐれもアイゼン(クランポン)は持参してくださいね。
※軽アイゼンで問題ないけれど六本爪以上が望ましい。

また紅葉谷道からの分岐「百間滝」「七曲り滝」へのルートは看板こそありますが、「難所あり、通行注意」の文字が書かれています。初心者の方は出来るだけ単独行はやめ、一度は氷瀑を見に来たことがある人と同行で向かうことをお勧めします。 

今年は僕が向かった日が遅かったこと(2月第4週)もあるとは思いますが、例年に比べると全体的に凍結が少なかったらしく、この日は「七曲り滝」で昨年の半分、「百間滝」にいたっては昨年に比べると1割ほどでした。残念。 

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それでもこの迫力ですけどね!
自然の力がどれほど偉大かを間近で感じることができます。

 

ちなみに比較用に前年2012年の「七曲り滝」の写真もあげておきます。
向かったのは2月第1週で9割ほど凍結していました。

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いつか全てが凍りついた、自然が作り出す芸術作品を見てみたいものです。

Staub ピコ・ココット オーバル

今年は近場の低山だけでなく割と本格的に冬山に登ろうと雪山装備を一式いろいろ揃える準備をしていたので、そのことについて書こうかと思ったけれど、とりあえずここ1番最近に我が家にやって来たアウトドア道具?を紹介。

ストウブの「ピコ・ココット オーバル 27cm」

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以前からずっとキャンプ用にダッチオーブンが欲しくて、それはもうサイズや素材や口コミからと、いろいろあたって探していたのです。
最終的にはダッチオーブン特有である鋳物のシーズニングが不要な新富士バーナー(SOTO)のステンレス・ダッチオーブン 10インチで決まりかけていて、あともう少しでポチるところだったのですが。

ソト(SOTO) ステンレスダッチオーブン(10インチ)  ST-910

ソト(SOTO) ステンレスダッチオーブン(10インチ) ST-910

ギリギリのところで妻さんがストウブでもダッチオーブンの代わりになると調べてくれまして、この度めでたく我が家にやって来ました。普段のお料理にも使えるのが素晴らしい!

僕も以前からストウブの存在自体はもちろん知っていたし、無骨な佇まいがかっこいいとも思っていたのですが、鋳物ホーロー加工してあるので屋外で使うのには向いていないと思っていたんです。ル・クルーゼと同じかなと。

だけど詳しく見てみると、蓋の形状からして炭がおけるし、鋳物は鋳物だし。ホーロー加工してあるかないかの違いだけなんですよね。
そもそも、ストウブもル・クルーゼもカテゴリで言うとダッチオーブンになるらしく、その中でも「キッチンオーブン」と言うんだとか。知らなかった!
普段の僕たちのイメージのダッチオーブンが「キャンプオーブン」なんだそうです。

そんな訳で我が家にル・クルーゼ ココット・ロンドの「18cm」と「22cm」についで、ストウブ ピコ・ココット 「オーバル27cm」がフランスからやって来ました!
シーズニングも不要!
家の中でも外でも使えるニクイ奴だ!

Staub ココット オーバル 27cm ブラック 40500-271(1102725)

Staub ココット オーバル 27cm ブラック 40500-271(1102725)

あ、ル・クルーゼのココット・ロンドは蓋に炭を乗せることが出来ないので、屋外でキャンプオーブンとしては使えませんのでご注意を!

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これは以前に友人夫婦がキャンプでご馳走してくれたスタッフドチキン。
それでなくてもキャンプというシチュエーションで食べる料理はどれも美味しいのに、これは鶏のお腹の中にピラフがぎっしり詰まっていて、それはそれはもう最高に美味しかった!

次回は僕が作ります!

僕らが山に登る理由

どうして山に登るの?

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「そこに山があるから(Because, it is there)」と答えたと言われているのは世界初のエベレスト登頂を目指したイギリスの登山家ジョージ・マロリーですが、山に登る人は(例え8,000m峰でなく低山であっても)多かれ少なかれ同じような質問をされることがあると思うんです。
僕もいままで何度か同じ質問を聞かれたことがあります。
その度に「運動不足解消」や「健康のため」だとか「達成感を得るため」だとか答えていますが、そのどれもが間違った答えではないんだけれど、すごく的を射た答えっていう訳でもない、少しもやもやとした思いを抱えてしまいます。

話は変わるんですが、日本人初の8000m峰全14座の登頂者竹内洋岳さんは、「登山はスポーツでなくてはならないと思う」とおっしゃられてます。
山登り・登山を、もしスポーツだと定義するのであれば、それはかなり特殊なスポーツだと言わざるを得ないと思います。
なぜなら他のスポーツのように定められたルールもなければ、審判もいないから。
高く登るのがいいのか、早く下山するのがいいのか、難しいバリエーションルートで登るのがいいのか。どれがいいのかは、それぞれの登山者の考えによるところが大きいからです。

登山というスポーツにおいて、もしひとつだけルールを挙げるとするのであれば、その唯一のルールは「苛酷な自然環境の下で行うこと」と言えるような気がします。

落石、落雷、降雨、吹雪。

それらの自然環境が、登山というスポーツにおける唯一のルールブックであるだろうし、それらの厳しい自然環境が想定の範囲内だと言えるスポーツが登山だと思うのです。
どんなスポーツでも怪我など危険はつきものですが、こと登山ほど自然を前に人間が簡単に死んでしまうようなスポーツは他にありません。
国内で毎年200人300人と死者や行方不明者が出るようなスポーツは登山の他にないと思います。

そう考えると最初にあげた疑問はますます大きくなるばかり。

「なぜ人は山に登るのか。」

僕にはまだはっきりとした理由が思いつきませんが、「何かに駆り立てられるから」と言うような漠然とした答えが思い浮かびます。
言い換えればそれは「本能」と言うものかも知れません。

元々僕たち人間がこの地球上に生まれるずっとずっと昔から、山はすでにそこにありました。
僕たちの祖先はすでにそこに存在した山のてっぺん目指して登ろう登ろうとしていたような気がしてなりません。
登ることが出来ないような山であれば、山を麓から見上げ崇拝したり。山岳信仰のようなものですよね。

何万年、何十万年前の昔から、そうして脈々と現代まで「山に登ること」は僕たちの身体の中に伝えられて来たような気がします。
それは「山に登ることによって、自分が生きていることを強く感じられる」というようなものかも知れません。

万人の身体の中に「山に登ること」が脈々と伝わっているとは思いませんが、「走ること」や「岩に登ること」、「水の中を自在に泳ぐこと」、何かしらを僕たちは受け継いで生まれて来ているような気がします。
パフォーマンスを発揮するのは、人それぞれ。その人次第なのかも知れませんね。

僕個人に関して言えば、以前の記事で書いたように山登りをしていた祖父の影響もあるでしょう。
また同居していた祖父が亡くなった後は、父と母2人が山登りを始めたことも関係あると思います。

いずれにせよ、祖父が登って見た景色、母が登って見た景色。
いまは亡き近しい人が見たものと同じ景色を見たいということが僕を山に登らせる1番の理由かも知れません。

野宿ライダー

よく人に聞かれることが多いのですが、僕が本格的にアウトドアにはまることになったのは、20代半ばから始めたキャンプ・ツーリングがきっかけです。山登りとかじゃないんです。

VESPAを手に入れて近畿のあちこちへツーリングしていた頃、テントを運んで旅をすれば宿代もかからないし良いんじゃないかと思ったことがきっかけだったように思います。

とは言っても当時の僕にキャンプの知識は何もありません。

飯盒炊爨は子どもの頃から祖父や父としていたので、飯盒で米を炊く程度の知識ならあったけれど、キャンプは高校1年と2年の夏休みに友人家族に奈良の山奥に連れて行ってもらった程度。もちろんキャンプ道具なんて何一つ持ってません。

そんな時に本屋で手にした本がこれでした。

寺崎勉 新・野宿ライダー―心すれば野宿ライダーになれるかもしれない本

寺崎勉 新・野宿ライダー―心すれば野宿ライダーになれるかもしれない本

 

今考えても最初にこの本に出会った自分は本当にラッキーだったなぁと思います。

タイトルが「野宿ライダー」と、バイク乗りやライダーしか読めない内容かと思いきや決してそうではなくて、アウトドア、つまり屋外で過ごす時間・屋外生活全般について分かりやすく説明されています。実用書としての完成度はむちゃくちゃ高いです。

内容はこんな感じ

  • 第一部 野に住む
    • 「家を建てる」
    • 「めしを食う」
    • 「夜をすごす」
    • 「朝が来た」
  • 第二部 野を走る
    • 「荷をつくる」
    • 「整備する」
    • 「身じたくをする」
    • 「野を走る」

二部構成からなり、キャンプ地探しからテントの建て方、焚き火や料理の仕方はもちろん、果ては排せつの仕方!?まで、ありとあらゆる野外生活のノウハウが詰め込まれています。

また著者が実際に使用した道具の数々が、時に辛口ながらもしっかりとレビューされていることも非常に参考になり、僕自身の道具選びに大きな影響を与えました。
例えばストーブやランタンは赤ガス(ホワイトガソリンではなく乗用車用無鉛ガソリン) が使えるタイプのものを選んだり、最初のテントをモンベルのムーンライト3型にしたり。受けた影響をあげるときりがありません。

10年以上昔に買った本なのに、いまだに年に数回は本棚から引っ張り出して読んでしまいます。そして、何度読み返しても飽きることがありません。読むといつも楽しいしワクワクします。

僕のアウトドア全ての原点と言っても大げさではない、そんな本です。

ただし、ここ最近流行りの「お洒落キャンプ」を望んでいる人には決して向きません。
なんてったって「野宿」ですからね。「お洒落」の対極、180度反対側のことばかり書かれています。
ドカシー(ブルーシート)の使い方とか、後片付けの手間を減らしかつ貴重な水を洗い物で無駄にしないため前夜から残ったコッヘルの米にラーメンをぶち込んで雑炊を作るだとか、とにかく野外で生きていく実践的な内容ばかりです。ある意味サバイバルに近いのかも知れない。
だけどそれらが実際の野外生活でどれだけ役立つことか。
お洒落アウトドア雑誌だけでは決して知り得ない実践方法が、これでもかとたくさん載っている、それがこの本の魅力です。

著者の文章も魅力的なので、以下少し引用。

キャンプ場でのキャンプは嫌いだ。
管理された自然の中で、
自然など感じられるわけはない。
人が来ない場所に、
人に見られない場所に、
ひっそりとテントを張る。
包み隠しのない自然と向き合っている。
だから、自然にウソはつけない。
外ヅラや外見ばかり気にするような、
薄っぺらな人間など、
いっぺんで見抜かれてしまう。
そこに一夜の宿を張らせてもらう。
草を何本か踏まさせてもらう。
朽ちた木を燃やさせてもらう。
できるだけ早く土に返るように、
排せつをさせてもらう。
そして、
なにもなかったかのごとく立ち去る。
人はいつの頃からか、
自然を支配している気になってしまったのか。
土が育んだ物を食べさせてもらい、
空気を呼吸させてもらい、
水を飲ませてもらっている。
いつも暖かい太陽を浴びさせてもらっている。
自然はウソをつかない。
晴れた分だけ雨が降る。
なにもかもが休む夜が必ずやってくる。
そのままを受け入れるしかない。
その中でひっそりと生活するしかない。
だから野宿。
いつでも野宿。 

旅に出たい、誰にも干渉されず過ごしたい、土のにおいを嗅ぎながら眠りたい
そんな時に読みたくなる1冊。

 

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いまから10年前の2003年、インテックス大阪で開かれた大阪モーターサイクルショーでお会いした著者の寺崎勉さんとのツーショット。
大切な1枚(マッシュルームカットな僕の姿も貴重。笑)

プロローグ

僕が大学生の頃に祖父が亡くなるまで、僕は父方の祖父と同居していました。

兄たちに言わせると僕は祖父の血を確実に受け継いでいるらしく、確かに僕がいままでのめり込んで来た「写真」や「カメラ」、「山登り」、それらの趣味はすべて生前の祖父の趣味でした。凝り性なのもそう。
(ちなみに「2輪」が好きなのは父親譲り)

そのうち祖父の晩年の趣味であった俳句を僕が始めるのも時間の問題なんじゃないかと最近言われています。
確かに興味ありますけどね、俳句。

 

冬の散歩でザクッザクッと落ち葉を踏みしめて歩く音が好きな人。

思ったこと、気づいたこと、なんでもすぐメモに取って残す人。

光、炎、星、花、虫、その他、自分が美しいと思うものを信じて疑わない強い感性の持ち主。

明治生まれらの人らしい神仏に対する厚い信仰心の持ち主。

道具に対する愛着。自らの手で操ることが出来る機械式製品へのこだわりを持った人。

思い出と一緒にしまい込んだ自分だけの宝物を生涯捨てられなかった人。

部屋に残されていた主を亡くした本のページを僕がめくると、中からたくさんの押し花があふれてきたこともあったっけ。

僕の祖父は、そんな人でした。

 

六甲山や金剛山
関西人なら小学校の遠足で必ず登るであろう山々も、祖父と登った記憶の方が僕の中には強く残っています。 

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これはそんな祖父と一緒に登った山行の中の1枚。
小学校5年生の冬休み、アイゼンをつけて登った金剛山で祖父にニコンで写してもらった写真。
もちろん祖父が暗室で手焼きしてくれたモノクロ写真です。 

僕の大切な大切な原体験。